遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
遺言書が見つかったら、遺言の内容を実現させるために必要な手続きを行わなくてはなりません。
その手続きを行う人のことを、遺言執行者といい、事前に遺言書の中で指定することができます。
ここでは遺言執行者について、その役割やメリットなどを確認していきましょう。
遺言執行者になれる人は誰か
遺言執行者は、遺言者が亡くなった時点で未成年者、自己破産者でなければ誰でもなることができます。
上記以外の方であれば、相続の対象となる人でも第三者でも構いません。
個人でも法人でも遺言執行者になることができます。
遺言執行の手続きは煩雑で、専門的な知識や時間、手間がかかる場合もあるため、専門家を指定するケースも多いです。
特に、遺産が多額で複雑だったり、負債が多かったり、相続人同士の仲が悪いなどの場合は、第三者である専門家に遺言執行者を任せる方が無難です。
また、遺言書の中で遺言執行者が指定されていたとしても、指定された人の都合により受任を断ることも可能です。
遺言執行者と指定されても、意思表示さえすれば理由なく断ることができます。
遺言執行者の役割とは
遺言執行者の役割は、遺言書の内容に従って手続きを行い、亡くなった方の意思を実現させることです。 ここでは遺言執行者としての役割を細かく確認していきましょう。
①遺言執行者の選任に対する意思表示
遺言者が亡くなると同時に、相続は開始します。
相続が開始したら、遺言執行者は選任されたことについて承諾をするか断るかの意思表示をしなくてはなりません。
断った場合には、新たに他の遺言執行者を選任するので、それ以降は遺言執行者としての役割は発生しません。
次からは遺言執行者の選任を承諾した場合の役割について説明していきます。
②相続人全員へ就任承諾の通知
遺言執行者として業務を開始するにあたって、遺言執行者として選任されたことを承諾した旨と、遺言書の内容を相続人全員に通知する義務があります。
③遺言内容の実現に向けて手続きの準備
遺言書の内容を実現させるために、戸籍等の証明書を収集したり、相続財産の調査をしたりといった手続きが必要です。これらはすべて遺言執行者の役割です。
この手続きの準備は長期に及ぶ可能性もあり、遺言執行者にとって最も負担が大きい部分ではないかと思われます。
④遺言書の内容に従って執行する
遺言書の内容の実現に向けた手続きが完了したら、いよいよ執行です。
遺言書の内容の通りに、不動産の名義変更や預金を相続人に分配するなどの手続きをして執行しましょう。
⑤相続人全員へ業務完了の通知
遺言書の内容通りに執行することができたら、相続人全員に業務完了の報告をします。
業務完了時だけではなく進捗状況をその都度報告すれば、トラブルの回避につながります。
相続人全員に業務完了の報告をすることができたら、遺言執行者としての役割は終了となります。
以上が、遺言執行者の役割のおおまかな流れです。
遺言執行は想像以上に大変で、複雑な手続きが多く含まれています。
特に法務局や金融機関とのやり取りは平日しか行えないため、手続きに時間がかかります。
遺言執行者に就任したからといって、すべてを1人で抱え込む必要はありませんので、難しい手続きがあったり、1人では判断できない場面があったら一度専門家に相談してみると良いでしょう。
遺言執行者という立場からでも、行政書士・司法書士などの専門家に依頼することが可能なので、遺言執行者の業務に不安を感じるのであれば、専門家に依頼するのも一つの手段として有効でしょう。
遺言執行者を指定するメリット
遺言執行者には様々な役割があり、時間や手間を要することが確認できました。 遺言執行者を指定しておくことによりどのようなメリットがあるのか、一緒に確認しておきましょう。 遺言執行者を指定することによるメリットは、以下の通りです。
①遺言書の内容を円滑に実現することができる
遺言執行者は、遺言書の内容に従って亡くなった方の不動産の名義変更や預貯金の相続手続きなどを進めることができます。
遺言執行者が指定されている場合は、相続人の同意がなくても相続手続きを行うことが可能なので、スムーズに手続きを進めることができ、遺言書の内容を円滑に実現することができるのです。
②遺産を確実に保護できる
勝手に不動産を売却されたり、お金を持ち出されたり、というのが遺産のトラブルで多く見受けられるケースですが、遺言執行者がいれば、遺言者が亡くなった後も資産を勝手に動かされる心配がなく、公正な相続手続きを行ってもらうことができます。
③死後に対する不安が取り除ける
遺言者にとって遺言執行者は、亡くなった後に相続手続きを代行してくれるだけでなく、不安な気持ちを取り除いてくれるパートナーでもあります。
信頼できる人を遺言執行者として指定することにより、遺言者が亡くなった後の家族・親族の関係や、相続に関する手続きなどを安心して任せることができます。
以上が遺言執行者を指定するメリットです。
遺言執行者を指定しておくと、遺言者にとっても残された家族にとっても安心です。
特に、行政書士や司法書士などの相続の専門家が遺言執行者として決まっていれば、相続手続きを公正に進めてくれるため、安心して遺言の執行を任せられます。
遺言執行者を指定する方法
遺言執行者を指定するためには、遺言書に記載する必要があります。
遺言書の中で遺言執行者を指定した場合は、その方が遺言執行者となります。
遺言書を作成する際に、遺言執行者として指定したい人がいなかった場合には、第三者に遺言執行者を指定してもらうように記載することもできます。
遺言書の中で指定されている方が遺言執行の際に亡くなっていたり、認知症などにより能力が乏しかったり、遺言執行をできない状態の場合は、家庭裁判所で新たな遺言執行者を選任してもらいます。
家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらう場合には、相続をする方や利害関係がある方が家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
遺言執行者の指定は、遺言書を作成するうえで必須の条件ではなく、遺言執行者がいなくても、遺言書の内容を実現させることは可能です。
しかし、遺言執行者がいれば確実に執行業務を行ってくれるため、遺言者も安心できるのではないでしょうか。
専門家に依頼する場合の費用
遺言執行者を専門家に依頼する場合、依頼する遺言執行者によって報酬額が異なります。
報酬額は、遺言書の中に記載がある場合はその金額になります。
遺言書の中に記載がない場合、金額の規定はありませんが、世間的な相場はあります。
報酬額の相場は、相続財産の1~3%となっています。
簡単な手続きであれば20万円~30万円ほどの報酬額で、行政書士や司法書士などの専門家に遺言執行者を任せることができます。
遺言執行者が一般人だった場合の報酬額についても特に規定はありません。
したがって、簡単な手続きの場合、士業の最低報酬に応じて20万円~30万円の報酬額が相場とされています。遺言執行者を一般人に任せた場合でも専門家に任せた場合でも報酬額の相場は変わらないので、専門的な知識や豊富な経験を持っている専門家に依頼する方が無難であり、安心できるといえるでしょう。
まとめ
遺言執行者について様々な点を確認してきました。
遺言執行者になったら大変だと思った方も多くいらっしゃるでしょう。
実際に、遺言執行者がやるべき手続きは多く煩雑であるため、業務を完了するまでに時間も手間もかかります。
行政書士・司法書士などの専門家を遺言執行者に選任しておくと、専門的な知識と経験をもとに、スムーズで適正に業務を完了させることができます。
遺言執行者について検討している方は、その後の手続きのことも含め、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
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