危急時遺言(緊急時の遺言)について

危急時遺言とは、遺言者に生命の危機が迫り、すぐに遺言書を作成しなければならない状態の場合に作る遺言書のことです。緊急性が高いため、口頭で遺言を遺すことを許されており、証人が代わりに書面化する形式で作成されます。
今回は緊急時に備えて、危急時遺言について確認していきましょう。

危急時遺言(緊急時の遺言)とは

一般危急時遺言について確認していきましょう。
一般危急時遺言とは、疾病やその他の事由によって危急に迫っている場合に作成する遺言方式です。

  • 一般臨終遺言、死亡危急者遺言とも言います。

遺言書としてはあまり一般的ではありませんが、生命の危機に迫った状況下で、ご自身の意思を反映するための手段として定められている遺言の方式です。

民法976条1項に下記のような規定があります。

疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立会いを以って、その1人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。

民法976条1項

この規定の中で4つの要件が大切となります。

①証人3人以上の立会いが必要

危急時遺言を作成するためには3人以上の証人が必要となりますが、証人は誰しもがなれるわけではありません。
未成年者、推定相続人及び受贈者、配偶者や直系血族、公証人の配偶者、4等身内の親族、書記などは証人にはなれません。
つまり利害関係人は証人になれないことが大変多く、危急時遺言を作成する場合は別室で待機してもらうことが多くあります。

  • 司法書士や行政書士といった専門家が証人になることが一般的ですが、危機が迫っている状況で作成することは大変難しい手続きになります。

②遺言者の発言を受けた者がその内容を書面化

その場で証人の1人が遺言を書面化し、作成します。

③書面化した内容を遺言者及び証人に読み聞かせるなどして内容に誤りがないか確認

遺言の内容に誤りがないかを再確認します。

④証人全員が署名、押印をする

押印に使用する印鑑は実印でも認印でも問題ありません。証人の署名、押印は遺言者の目の前で行います。家庭裁判所への申述も必要となります。

危急時遺言の作成を対応している事務所は多くありません

危急時遺言は遺言者本人が1人で作成することができる自筆証書遺言や公証役場で作成を行う公正証書遺言などの普通方式の遺言よりも一層注意を払う必要があります。 なぜなら、上記でもお伝えしたように、急がなければ遺言作成の機会が失われるという生命の緊急時における作成になるからです。

そのため、危急時遺言というのは非常に稀な事案です。都市部の家庭裁判所でも年に数件、地方の家庭裁判所では数年に1度取り扱うかどうかといった事案で、危急時遺言について実績のある専門家の事務所も各都道府県に数える程しかいないのが現状です。

受理をする家庭裁判所でさえ、危急時遺言については稀で慎重に取り扱う業務であるため、証人を担う専門家はより一層危急時遺言についての経験値が求められます。

しかし、専門家の責任が重大なため、個人事務所で危急時遺言を取り扱っている事務所は少なく、生命の危機緊急性が高いものが多いため、対応が難しいというのが現状ですが、非常に困難です。

そのため、危急時遺言の実務経験のある専門家に相談することをおすすめいたします。緊急性が高い、遺言者の最期に関わる責任の重さテクニックが必要なので対応できる事務所への相談が必要です。

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危急時遺言作成の手続きの流れ

相続遺言相談センターにてお手伝いさせていただくときの手続きの流れは以下の通りです。基本的には3名の証人全員相続遺言相談センターの社員が担います。

(1)経緯を把握させていただいてから遺言者のもとへ向かいます。

遺言者のもとへ訪問する前に、遺言者のご身内の方と遺言者の方で場所などの段取りをしておいていただけると、遺言書をスムーズに作成することができます。
病院等で危急時遺言を作成する場合には、病院の相談室や個室を事前に予約をします。

(2)遺言者のもとに到着、遺言者から内容の確認をします。

遺言者の意向を確認し、口頭で聞きとった上で内容を書面化します。
遺言書を作成する際には、遺言が実現できるように最善の記載内容を選択していき、特定できる財産の情報が多いほど、スムーズに作成することができます。

(3)作成した遺言書を遺言者に見て確認してもらい、口頭でも伝えます。

遺言者が残したい趣旨が誤りなく遺言書に記載されているか、遺言者が内容を理解し、同意しているかを確認します。

  • その他の証人もこの様子を確認します。

(4)証人3人が署名と押印を行います。

遺言書の記載に誤りがないことを確認した上で、証人3人が住所と氏名を署名、押印します。この証人は利害関係人ではなることができないため、遺言者の配偶者や子供は証人になることができません。

(5)家庭裁判所へ危急時遺言を申述します。

遺言書を作成した日から20日以内に利害関係人または証人のうち1人から家庭裁判所へ遺言書を提出し、内容に不備がないかを確認する必要があります。
1ヶ月~2ヶ月ほどで家庭裁判所から、確認ができた旨の通知がくることにより、危急時遺言の作成が完了となります。

  • しかし、危急時遺言はあくまでも緊急時の一時的遺言になるため、遺言者本人が回復するなどして、通常に遺言書を作成することができるようになったときは、体調が回復をしてから6カ月を経過した時点で無効となります。

危急時遺言作成後の手続き

上記でもお伝えしたように、危急時遺言を作成した場合には、遺言を作成した日から20日以内に遺言の立会証人のうち1人または利害関係人から家庭裁判所へ申立てをし、家庭裁判所の確認を得ることが必要となります。

申立先は遺言書を作成してから20日以内に遺言者が亡くなった場合には、亡くなった場所(病院など)を管轄する家庭裁判所、遺言者の生存中の場合には、その住所地の家庭裁判所に申立が必要になります。
申立費用は、遺言書1通につき収入印紙800円、郵便切手(各家庭裁判所によって異なる場合があります。)

申立をする場合の必要書類を下記に記載いたします。

  • 申立人の戸籍謄本
  • 遺言者の戸籍謄本or除籍謄本(遺言者がお亡くなりになった場合)
  • 立会証人の住民票or戸籍の附票
  • 遺言書の写し
  • 医師の診断書(遺言者が生存している場合)
  • 疾病事由で死亡危急者の場合には、医師の病院が必要になります。

家庭裁判所が行う遺言書の確認では、口頭で聞きとりをした内容を書面に表した遺言書が、本当に遺言者の意図であることの心証を得た時に確認の審判をされます。
確認がされた場合に、遺言書作成時にさかのぼって遺言者本人の行った遺言として完成します。
遺言の確認が完了したら、さらに家庭裁判所の検認を得ることが必要です。

危急時遺言は非常に緊急性が高く、遺言者の状態からも、事前打ち合わせが困難な場合が多く、その場で法律的な判断が必要になります。
そのため、切迫した状況で作成しなければならないため、慎重に作成する必要があります。また、一般の方が作成するのは難しいでしょう。遺言者の最期の局面で少しでも安心していただくためにも、危急時遺言作成の実績のある専門家に相談することをおすすめいたします。

危急時遺言のお手伝いに関わるサポート料金

以下の表は、相続遺言相談センターが危急時遺言のお手伝いをさせていただく場合の報酬額となります。

5000万未満85,800円~
5000万以上1億円未満118,800円~
1億円以上2億円未満151,800円~
2億円以上184,800円~
  • 遺言の証人日当: 66,000円
    ※3名の場合(1名につき日当22,000円)危急時遺言の場合、通常の公証役場で作成する公正証書遺言の証人とは異なり、3人で5~6時間の拘束となります。公正証書遺言の証人は1時間ほど。 
  • 家庭裁判所への申述: 55,000円
  • 訪問にかかる交通費、行政機関、家庭裁判所にて必要となる手数料は実費分の負担をお願いします。
  • こちらは全て税込表記になります。

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